東京西法律事務所

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2017年3月29日水曜日

相続セミナー&相談会(三鷹開催)

先日、本年1回目となります4月開催予定の相続セミナー&相談会@新宿の告知をさせて頂きましたが、続いて本年2回目の相続セミナー&相談会(主催者:東葬祭様及び栃木屋石材店様)の開催が決まりましたので、告知をさせて頂きます。

今回は、場所は三鷹で、6月開催予定です。

昨年6月に「遺言書の書き方講座」をテーマに講演させて頂いておりましたが、今回はその続編となります。

「もしも講座」第9回
日時:平成29年6月18日(日)10時30分~
場所:三鷹.市民斎場
テーマ:遺言書の書き方講座=実践編=

ご参加をご希望の方は、直接主催者様(東葬祭:0120-66-5940)までお申し込み下さい。

2017年3月20日月曜日

相続セミナー&相談会

相続セミナー講師を務めさせて頂くことになりました。
本年度の第1回となります。

本セミナーはどなたでもご参加いただけます。
ご興味のある方は、主催者様までご連絡下さい。

日時:4月16日(日)10:00〜
場所:東京都新宿区西新宿1−24−1エステック情報ビル
   21階会議室D
テーマ:過去の事例から学ぶ不動産に関わる相続及び税務相談会(セミナー付)








2017年2月12日日曜日

家裁の扱う事件数、年間100万件突破へ

日経新聞電子版によりますと、全国の家裁が扱う訴訟、家事調停、家事審判が、昨年度、史上初めて年間合計100万件を突破することが確実になったと報じられています。


----以下引用


家裁が扱う調停や審判、初の100万件 16年最多更新 

2017/2/9 13:43
 離婚、相続といった親族間の問題が調停や審判として家庭裁判所に持ち込まれる「家事事件」が増えている。2016年の件数は1949年の統計開始以来、初めて100万件を超えることが確実になった。進む高齢化や裁判を巡る意識の変化が背景にある。
画像の拡大
 最高裁の司法統計によると、16年1~11月に全国の家裁が受けた訴訟や審判、調停などの件数は計93万9992件(速報値)で前年同期を5万件超上回った。月間8万件超のペースで推移しており、年間では最多だった15年(96万9953件)を超えるのは確実だ。
 増加が目立つ案件は相続放棄の手続き。住む予定のない実家などを相続しない人が急増し、15年の申立件数は約18万9千件で30年前の4倍。遺産相続に絡む争いも多く、故人の財産の分け方を決める遺産分割の調停は約1万2千件と10年間で3千件近く増えた。
 離婚に伴う争いも多い。別居中の夫婦が生活費などの負担割合を決める「婚姻費用の分担」の調停や審判は、15年に約2万3千件と10年間で2倍以上に。子供との面会交流を求める調停なども10年前の約5千件から約1万4千件に増えた。専門家は「当事者だけでは解決に至らない場合に裁判所を利用しようと考える人が増えてきている」と市民の意識の変化を指摘する。
引用元URL: http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H6R_Z00C17A2AM1000/
-----引用ここまで

記事によると、一番増加に寄与したのは相続放棄のようですね。

インターネット上の法律相談でも、「親の借金を返したくない」という動機で相続放棄を行う方が結構多いように見受けられます。

昔であれば、親の作った借金をそのまま引き受けて返済していた律儀な人も多かったのかも知れませんが、時代による人々の考え方の変化が反映しているように思われます。

また、記事でも指摘のある通り、利用価値のない地方の不動産(実家)の相続を避ける目的での相続放棄も増えているようで、この点については、以前、私もメディアに記事を書かせていただきました(当ブログにも収録しております)。

遺産分割調停もここ10年間で3000件増加し、1万2000件の大台に乗りました。

当事務所でも、昨年から今年にかけて、片手に収まらない数の遺産分割調停を常に同時並行で取り扱っており、ここ数年、増加の一途を辿っています。

今までは、私だけかとも思っていましたが、世間全体での数の増加も背景にあるのかも知れません。

この調停数の増加も、様々な原因があると思いますが、その1つに、先ほど述べた相続放棄と同じように、世の中の「意識の変化」があるのではないかと思われます。

もともと、相続に関する争いは、相続そのものだけでなく、それまでの親との関わりなど、家族の歴史を背景とすることがよくあります。

また、戦前であれば、長男がすべて相続することが当たり前でしたが、戦後生まれの相続人が増えており、長子相続の伝統が人々の意識の中から消えつつあることも、相続の争いが増えている原因の1つであると思われます。

争いごとはないに越したことはありません。

しかしながら、一度争いごとになった時は、当事者間で泥沼の争いをするよりも、調停で解決した方が、ずっと早く、合理的な解決を得られることが多いです。

ところが、世間では、遺産分割調停を行うと、争いが長引くと思い込んでいる方が多く、私も専門家の1人として、誤解を解消していく必要があると感じています。

遺産分割調停については、また日を改めて詳しく解説したいと思います。

2017年2月3日金曜日

節税目的での養子縁組の有効性について


節税目的での養子縁組の有効性に関する1月31日付の最高裁判決について、弁護士ドットコムニュースさんに私の解説が掲載されましたので、お知らせします。どうぞご覧下さい。

記事URL: https://www.bengo4.com/c_4/n_5654/

タイトル:節税目的の養子縁組「ただちに無効にならず」最高裁初判断…今後、どんな影響がある?


相続税対策で結んだ養子縁組は有効か否か。亡くなった男性が、孫(長男の子ども)と養子縁組を結んだのは「節税目的であり、無効だ」と男性の長女と次女が訴えた裁判で、最高裁は1月31日、目的がもっぱら節税であっても「直ちに無効にならない」と初の判断を示した。

相続人の数を増やして非課税になる控除額を増やす「節税」は、富裕層で活用する人が多いといわれる中、注目される判決だった。裁判所の判断は、こうした現状を追認したとみられる。
相続に詳しい弁護士はこの判決をどうみたのか。また、相続において、養子縁組は、どのように利用されているのだろうか。加藤尚憲弁護士に聞いた。


●そもそも、何が問題なのか


「法律上、有効に養子縁組を行うためには、『(養子)縁組をする意思』が必要とされています(民法802条1号)。この『養子縁組をする意思(縁組意思)』は、次の2つを充たす必要があると考えられています。
(1)養子縁組の届出をする意思
(2)実際に養親子関係を形成する意思
節税目的で養子縁組を行う場合、(2)の意思、すなわち本当に親子になる意思があるのかどうかが問題となります」
加藤弁護士はこのように述べる。

●「節税目的の養子縁組は必ず有効」という判断ではない


今回、最高裁はどのような判断を下したのだろうか。
「最高裁は、『相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得る』として、『専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合』でも、直ちに縁組意思は否定されないものと判断しました。
この判決は、『節税目的の養子縁組は必ず有効だ』と保証しているわけではありません。あくまで、『節税目的が縁組意思と矛盾しない』と言っているに過ぎない点に注意する必要があります。
もっとも、今回の判決が『専ら』節税目的の場合も縁組意思も否定されないと述べる以上、今後は、先ほど述べた(2)『実際に養親子関係を形成する意思』は、かなり抽象的なものであっても許されるという考え方が実務上有力になるのではないでしょうか。
これまでの下級審裁判例では、養子縁組の動機が節税目的かどうかが争われた例もありました。しかし今後は、そのような争点自体が意味を持たなくなったと言えるでしょう」


●養子縁組は意外と多い


一般の人にとって、節税のために「養子縁組」をする発想はあまり持たないように思うが、相続の世界では良くあることなのだろうか。
「法務省の統計によると、ここ数年の間、安定して毎年8万件を超える養子縁組の届出が受理されています。
この数を多いと見るか、少ないと見るかについては、様々な考え方があると思いますが、実際に、相続に関するご相談をお受けしていると、養子縁組の話をお伺いすることは良くあります。
感覚的には、4回から5回のご相談のうち1回程度が、養子縁組をされている方や、そのご親族の方からのご相談ではないでしょうか」



●なぜ養子縁組は行われるのか


今回の裁判は、孫を養子としたケースだったが、一般的には、誰をどのような目的で養子とすることが多いのだろうか?
「日本では、赤の他人との間の養子縁組は比較的稀であると思います。何らかの形で、すでに親戚関係にある方々の間の養子縁組が圧倒的多数を占めています。
特に多いのが、次の3つの立場の方が養子になる場合です。

(1)お孫さん
お祖父さん、お祖母さんがお孫さんを養子にする場合です。養子になる方は、一族の跡取りとして目される方が多いと思われます。相続税との関係では、相続を一代飛ばすメリットがありますが、税制の改正により、現在ではその効果は薄れています。

(2)お嫁さん・お婿さん
世間では、お嫁さんが、お義父さん、お義母さんの身の回りの世話を一生懸命されることは良くあります。しかしながら、お嫁さん自身には相続人の資格はありません。ご主人に先立たれた場合や、相続税や遺留分などに目配りをする場合などに、養子縁組を行うときがあります。

(3)甥御さん・姪御さん
お子さんのいらっしゃらないご夫婦が、後継者としてご兄弟のお子さんを養子に迎える場合です。なお、養子になった方は、実の親御さんとの法律上の親子関係は継続するため、養親と実親の双方の相続人になります。

このように、養子縁組は、一般的に、様々な家庭のご事情や介護への期待などを背景として行われていることをご理解頂ければと思います。逆に、私はこれまで節税だけを目的とした養子縁組が行われたということを耳にしたことはありません。相続税を意識している場合も多いと思いますが、あくまで節税は目的の1つに留まることが一般的なのです」

加藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)
 


2017年1月5日木曜日

最高裁「預貯金は遺産分割の対象に」判例見直し…相続問題「3つの影響」を徹底解説

預貯金の遺産分割に関する昨年末の最高裁判例について弁護士ドットコムニュースさんに記事を寄稿させて頂きました。



https://www.bengo4.com/c_4/c_1050/n_5550/

最高裁「預貯金は遺産分割の対象に」判例見直し…相続問題「3つの影響」を徹底解説

相続の際に取り分を決める「遺産分割」の対象に預貯金が含まれるかどうかが争われた裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は12月19日、「預貯金は遺産分割の対象とならない」としてきた判例を見直し、「対象になる」とする初判断を示した。遺産分割審判に対する抗告棄却決定を取り消し、審理を大阪高裁に差し戻した。

大法廷は「遺産分割の仕組みは相続人間の実質的公平を図るためのもの」と指摘。そのためには「できる限り幅広い財産を対象とすることが望ましい」とした。現金が遺産分割の対象となっていることと比較して、簡単かつ確実に現金に換えられる預貯金との間にそれほどの差がないと認めた。

今回の決定は今後どのような影響があるのか。加藤尚憲弁護士に聞いた。

加藤弁護士が指摘する今回の決定の主な影響は次の3点だ。
(1)金融機関の対応が変わる
(2)遺産分割の結果が変わる
(3)遺産分割が長引く場合がある

以下、ルール変更で相続額が具体的にどのように変化するのかという点について、算定式を示しながら、加藤弁護士の解説を紹介する。

●これまでは預貯金は遺産分割の対象ではなかった

世間では、預貯金が遺産分割の対象となることは当然のように思われています。しかし、実は、法律上のルールはそうではありませんでした。これまでの判例では、預貯金は原則として「法定相続分(民法で定められた取り分)に従い当然に分割して承継される」とされていました。

つまり、遺産分割を行わなくても、相続人は、銀行など金融機関に対して、法定相続分に従った預貯金の支払を求めることができたのです。

また、家庭裁判所で遺産分割調停を行う際も、預貯金を遺産分割の対象とすることについて相続人の間で意見が一致しないときは、預貯金は遺産分割の対象から除外されていました。

これに対して、今回の最高裁の決定は、預貯金は「相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」と判断しました。

つまり、今回の決定は、先ほど述べたこれまでのルールを根底から覆したのです。このことにより、これから述べるように、いくつかの影響が予想されます。

●金融機関の対応が変わる

まず第1は、金融機関の対応の変化です。
これまでは、遺産分割前の預貯金の払い戻しについては、金融機関により対応がやや異なり、法定相続分の限度で応じるところもありました。

しかし今後は、金融機関は、遺産分割前の預貯金の払い戻しに対し、一切応じないことが予想されます。

現に、私が決定翌日に、たまたまとある銀行の支店長さんとお会いした際に、その支店長さんは、その銀行ではその日(決定翌日)から突然窓口の取り扱いが変わったとおっしゃっていました。

もともと判例変更が予想されていましたから、同じような対応をした金融機関も多かったのではないでしょうか。

●遺産分割の結果が変わる

第2に、これまでとは遺産分割の結果が変わる場合があります。それがまさに今回の判例のケースです。判例のケースは、以下のようなものでした(金額はすべて概算額)。

(1)相続人(2人)・子(以下「Xさん」、法定相続分は2分の1)・孫(以下「Yさん」、法定相続分2分の1)(孫が相続人なのは、被相続人(亡くなった方)の娘(孫の母)が既に亡くなっているから)

(2)相続財産・預貯金(外貨建預金:残高4000万円相当(日本円換算)など)・不動産(250万円相当)

(3)Yさんは、被相続人から5500万円の生前贈与を受けていた。

このケースのように、相続人の1人が被相続人から生前贈与を受けたときは、相続人間の公平を保つため、原則として、遺産分割を行う際、「遺産の前渡しを受けた」のと同じ取り扱いをします(このような調整を「特別受益の持戻し」といいます)。

もっとも、特別受益は、あくまで遺産分割の際に不利益に働くだけで、(遺留分に反しない限り)すでに受け取った生前贈与を返す必要はありません。

そして、これまでのルールの下では、預貯金は法定相続分に従って当然に分割されるため、生前贈与を受けたYさんは、遺産分割を行わずに、法定相続分に従って預貯金を相続する(4000万円×1/2=2000万円)ことができます。

そうすると、遺産分割の対象になる財産は、(相対的に価値の低い)不動産(250万円相当)に限られるため、Xさんは、預貯金の半分(2000万円)と不動産だけを相続することになります。

これでは、Yさんは5500万円の生前贈与を受け取っているのに、Xさんの相続分は約250万円程度しか増えないことになり、いくら生前贈与が特別受益になるといっても、実際上はあまり意味がありません。

そこで、新しい判例は、この不都合な状況を変えるため、これまでのルールを変更し、預貯金も遺産分割の対象になることにしました。

そして、このケースでは、Yさんが受けた生前贈与の額(5500万円)は、相続財産の総額(4250万円)を上回っていますから、Yさんは、遺産分割の中で、自分の相続分は生前贈与により全て前渡しを受けたものとして取り扱われます。

そうすると、もはやYさんが相続すべき財産はなく、結果として、Xさんが預貯金を含めた相続財産を原則全て相続することになります。

ここで、これまでの判例のルールと、新しい判例のルールでXさんとYさんの相続割合がどう変わるのか確認してみましょう。

(これまでの判例のルールで計算)
Xさん:預貯金2000万円+不動産250万円=2250万円
Yさん:預貯金2000万円+生前贈与5500万円=7500万円

(新しい判例のルールで計算)
Xさん:預貯金4000万円+不動産250万円=4250万円
Yさん:預貯金0円+生前贈与5500万円=5500万円

XさんとYさんの差は大きく縮まっていることが分かるでしょう。このように、新しいルールは、預貯金を調整対象に含めることで、相続人間の公平をより広く実現しようとしているのです。

●遺産分割が長引く場合がある

第3に、遺産分割の結果が変わることがある以上、これまでよりも遺産分割調停が長引く場合が出てきます。

先ほどのXさんとYさんの例で考えてみましょう。これまでのルールでは、Xさんは、たとえ生前贈与があったことを知っていても、特別受益の主張をする実益がほとんどありません。

そうすると、Xさんは、特別受益の主張を諦めてしまうことがあるので、たとえ不公平でも、その分だけ遺産分割調停は早く終わることになります。

これに対し、新しいルールのもとでは、Xさんは、特別受益を主張する実益が出てくるため、諦めずに特別受益の主張をすることになるでしょう。

そうすると、新しいルールのもとでは、過去に生前贈与があったかなかったかをめぐって遺産分割調停が長引く可能性が出てきます。

さらには、特別受益だけでなく、(相続人の1人の貢献により相続財産が増えた場合に認められる)寄与分についても、同じように主張する実益があるケースが増えるものと考えられます。

このように、今回の判例変更により、遺産分割調停が長引くケースが増えることが予想されます。

●決定後も変わらないことは?

今回の判例は、あくまで預貯金が相続人間の調整のために遺産分割の対象となるとするものです。

したがって、親族間の現金の貸し借りによって発生した債権など、預貯金以外の債権については、これまで通り、法律上当然に分割されるものと考えられます。

●残された課題、裁判官からは多くの補足意見

ところで、今回の判例には、たくさんの裁判官の補足意見や意見が付されており、その中では今後出てくる可能性のある新たな問題点が指摘されています。

例えば、5名の裁判官の補足意見は、遺産分割が成立するまで預貯金の払い戻しができなくなったことにより、相続人が相続債務の弁済資金に困ることがあることを指摘し、解決策として、仮処分により預貯金の一部について仮の遺産分割を行うことを提言しています。

もっとも、預金を引き出すためだけに仮処分の申し立てを行う手間の負担が大きく、個人的には、実際に仮処分を行う場合は限られるのではないかと思います。

このほかにも、補足意見や意見の中には、今後の実務上の問題点が指摘されており、私たち実務家には、新しいルールの下で出てくる新たな課題を解決して行くことが求められています。

(弁護士ドットコムニュース)

2016年12月27日火曜日

セミナー講師を務めました

うっかり当ブログでの事前告知を忘れてしまいましたが、12月24日(土)のクリスマスイブの日に、横浜市能見台地域ケアプラザにて開催された任意後見に関するセミナーの講師を務めさせて頂きました。

今回は、全5回シリーズの第2回目のセミナーの講師としてお呼び頂き、成年後見と相続についてお話させて頂きました。

成年後見と相続の両方のテーマにまたがってお話をさせて頂くのは、私としても初めての試みだったのですが、今回は多めに時間を頂戴したため(75分間)、少し欲張ってお話をさせて頂くことができました。

30名程度の方にご参加頂き、クイズなどを交えながら、なるべくわかりやすい話を心がけてお話をさせて頂きました。

セミナー後のアンケートでは、わかりやすかったとお答え頂いた方が多く、安心しましたが、任意後見についてもう少し実例を加えて話して欲しいとのご要望もあり、今後はより一層の改良を加えて行きたいと考えております。

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。皆様のお役に立てれば幸いです。


2016年12月19日月曜日

実務に大激震! 預貯金の相続に関する判例変更について(速報)

本日(12月19日)、預貯金は(相続人間の合意の有無に関わらず)遺産分割の対象となるとの最高裁大法廷の決定がなされました。

決定全文はこちら↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf


この判例変更は、予想されていたことではありますが、相続の実務に携わる者の1人として、一言コメントせずに一日を終えることはできないと感じられるほど、インパクトが大きいものです。

従来の判例の内容や、前提となる話は、以前、本ブログや弁護士ドットコムニュースさんに寄稿させて頂いた記事で触れておりますので、こちらをご覧いただければと思います。

http://wakarusouzoku.blogspot.jp/2016/04/blog-post.html

https://www.bengo4.com/c_4/c_1050/n_4543/

本稿では、決定文を踏まえ、判例変更が実務に与える影響について、以下具体的に考察したいと思います。

なお、あくまで速報ベースであるため、理由が簡潔なものとなることはご了承ください。

①預貯金以外の債権が遺産分割の対象となるか(判例の射程)
[結論] 否定
[理由] 指名債権など、預貯金以外の金銭債権が遺産分割の対象となるかについて、本決定は明確に述べておりません。

しかしながら、本判決の判決理由では、実務上、預貯金が相続人の合意のもとで遺産分割の対象とされていること、(従来から遺産分割の対象とされて来た)現金と余り変わらないものとして一般に認識されていること、預貯金を遺産分割の対象とすることが相続人間の調整に資することなど、預貯金特有の理由を挙げていることからすると、預貯金以外の債権については、従来と同様、遺産分割の対象にならない可能性が高いものと考えられます。

②金融機関は遺産分割の成立まで相続人からの支払を拒むことができるか(債務者への影響)
[結論] 肯定
[理由] 本決定はあくまで相続人間の訴訟の事案に関するものですが、判決理由が預貯金債権について相続人が準共有すると述べ、相続時の当然分割を否定している以上、今後は金融機関は相続人単独での預金の引き出しを拒みうる立場にあるものと考えられます。

この点は、実務上は、相続人単独での預金の引き出しを拒み続けていた金融機関もありましたが、本決定はこの取り扱いにお墨付きを与えたものと言うことができると考えられます。

③過去の遺産分割への影響(遡及的効果)
[結論] 不透明
[理由] 本決定は、従来の判例を前提としてすでに成立した遺産分割については、何も触れておりません。

そこで、従来の判例を前提に遺産分割を行なった当事者が錯誤による無効を主張したらどうなるのか、という懸念はあります。

一般的に、すでに終わったはずの相続の蒸し返しを行うことは相当とは言えない場合が多いでしょう。

しかしながら、決定理由を見る限り、過去の遺産分割については効力を維持するとの理由は見出し難いところです。

もっとも、動機の錯誤が認められる場合(=動機の表示があった場合)が限られているため、そもそも錯誤の成立が裁判上認められる場合は非常に限られているとは思われますが、そのような可能性が完全に排斥されている訳でもない点は留意しておきたいと思います。

この点において、本決定は、非嫡出子に対する相続分の差別的取扱いを行なっていた民法の規定(当時)を違憲とした際の判例変更とは事情が異なっているように思われます。

以上は、もちろんのこと、一人の実務家の私見に過ぎません。また、私自身、分析が甘い点があるかもしれません。

本件判例を巡っては、今後半年程度は研究者から論考の発表が相次ぐものと思われますので、注目して行きたいと思います。

2016年12月2日金曜日

節税目的の養子縁組は有効か?

弁護士ドットコムニュースさんより、節税目的の養子縁組に関するニュース記事の寄稿依頼を頂きましたので、記事を書かせて頂きました。

タイトル:最高裁「節税目的の養子縁組は有効」の初判断を下すのか? 弁護士が予想

URL:https://www.bengo4.com/zeimu/1124/n_5358/




相続税対策で生前に行った孫との養子縁組は無効かーー。別の遺族が孫を訴えた裁判で、最高裁第3小法廷が12月20日、弁論を開くと報じられている。判決では、節税目的の養子縁組は有効とする初判断を示す可能性がある。

報道によると、この裁判は、2013年に82歳で死亡した男性が生前、長男の子どもと養子縁組をしたことに対し、男性の長女と次女が無効を訴えていた。一審の東京家裁は有効と判断したが、二審の東京高裁は「税理士が勧めた相続税対策にすぎず、男性は孫との間に真実の親子関係を創設する意思はなかった」として、無効と判断。孫側が上告していた。

最高裁では、この二審判決が見直される可能性がある。相続について詳しい弁護士はどのように見ているのだろうか。加藤尚憲弁護士に話を聞いた。

●なぜ「養子縁組が節税になる」?

相続税は、大雑把に言うと、相続財産の額が「基礎控除」の額を超えた場合のみ課税されます。基礎控除は、次の式から導くことができます。

・基礎控除=3000万円+法定相続人の人数×600万円

つまり、養子縁組により法定相続人の数を増やせば、「基礎控除」の額が増えるため、節税に繋がるのです。

ただし、節税目的で多数の人を養子にすることを防ぐため、実子のいる場合は養子1人まで、実子のいない場合は養子2人までを、上記の式の中で法定相続人の人数として数えることになっています。

●節税目的の養子は本当にダメなのか?

養子縁組は、当事者の間で養子縁組をする意思を欠いている場合は、無効となります。

節税目的だからと言って、直ちに養子縁組をする意思を欠いているとは言えません。しかし、節税が唯一の目的の場合、本当に養子縁組をして、法律上の親子関係を築く意思があるのかが問題となります。

過去の下級審では、事案によって判断が分かれています。節税だけが目的の養子縁組を無効と判断した裁判例もありますし、他方で、「節税目的だからといって直ちに縁組意思がないとはいえない」として、養子縁組を有効と判断した裁判例もあります。

●最高裁、見直しの可能性は?

さて、裁判所が上告を棄却する場合は、弁論を開く必要がありません。逆に言えば、今回のように、わざわざ弁論が開かれることは、二審の判決が見直される可能性が高まったとも言えるのです。

しかし、最高裁が二審の判決を見直すとしても、必ずしも「節税目的の養子縁組は全て有効である」という内容の判断を行うとは限りません。

むしろ「節税が目的であるとからといって、それだけで縁組意思がなかったとはいえない」という至極当たり前の判断をする可能性もあると思われます。

仮にそうだとすれば、今後も節税目的の養子縁組の有効性はケースバイケースの判断にとどまることになるでしょう。この判決でも、従来の下級審裁判例で用いられてきた判断の基本的な枠組みが維持されるものと予想します。

(弁護士ドットコムニュース)

2016年11月16日水曜日

セミナーを終えて

11月13日に三鷹.市民斎場に「相続と財産管理の『今できること』」と題してお話をさせて頂きました。

セミナーには、約30名の方にご参加頂き、盛況のうちに終了しました。

今回は、成年後見と家族信託についてお話をさせて頂きました。目新しい話が多かったので、少し難しすぎたのではないかと反省しております。




ご参加いただいた皆様及び主催の東葬祭様及び栃木屋石材店様に厚く御礼申し上げます。

2016年10月18日火曜日

相続セミナー開催のお知らせ(11月)

11月13日(日)に三鷹で開催される相続セミナーの講師を務めさせて頂きます。

「もしも講座」第8回
日時:平成28年11月13日(日)10時30分
場所:三鷹.市民斎場
テーマ:相続と財産管理の「今できること」

今年6月に開催された「遺言の書き方講座」が皆様のご好評を頂き、再度講師を務めさせて頂く運びとなりました。

今回は、相続の前段階の悩みである「財産管理」について、お話をさせて頂きます。

前回ご出席いただいた方にもそうでない方にも、ためになる話をわかりやすくさせて頂きますので、参加希望の方は、ふるって主催者様までご連絡ください。

2016年7月28日木曜日

相続人の証明書について

各種報道によりますと、法務省は、相続手続の簡素化のため、相続人の証明書を発行することを検討しているとのことです。



---以下引用


 手続き簡素化、相続人の負担軽減 戸籍集め なお課題     

法務省が相続手続きの簡素化を決め「素人には至難の業」(相続診断協会の小川実代表理事)とされてきた相続人の負担はある程度軽くなる。ただ、相続で最も面倒な戸籍集めの作業は残る。マイナンバーを戸籍に適用するなどして、さらに手続きを簡素化する必要がある。
 東京都在住の40代男性は最近母親を亡くし、相続手続きをした。手続きでは生前に本籍を移した全ての役所で戸籍を取得する必要がある。母親は生前、本籍を3回変更しており、男性は日本各地の役所に出向いた。
 相続人はこの大量の書類一式がなければ何もできない。母親の銀行預金を引き出すにも書類を複数の銀行窓口に出さなければならず「仕事がまったく手に着かないほど忙殺された」という。
 新制度では、集めた書類一式を法務局に提出すると証明書が発行され、それを金融機関などに提出すればよくなる。
 それでも、最も手間がかかる戸籍集めの作業は新制度の導入後も変わらない。高齢化社会を反映し、死亡者数は毎年120万人を超えている。信託銀行に遺言を預けたり、執行を依頼したりしている件数も2015年度末で約11万件と5年前に比べ5割増えた。
 新制度は相続手続きに伴う「膨大な社会的コスト」(法務省)の軽減を狙う。大きな一歩ではあるが、なお改善の余地は残っている。

---引用終わり
(出典: 日本経済新聞電子版 http://www.nikkei.com/article/DGXLZO04500280V00C16A7EE8000/


 
この証明書により、どの程度の省力化が可能かについて、当ブログで取り上げようとしていた矢先、弁護士ドットコムニュースさんより寄稿のご依頼を頂きましたので、先日、記事として公開させて頂きました。ご覧下さい。

タイトル:慶應や安政生まれも?「相続手続き」戸籍謄本集め、垣間見える先祖の人生



https://www.bengo4.com/internet/n_4919/

以下記事本文

法務省が、相続手続きを簡素化する新しい制度を2017年度に新設することを検討している。法改正ではなく、省令や通達で対応する。

現在は、大量の書類一式を集め、登記所など関係機関の窓口にそれぞれ提出する必要があった。法務省によると、新制度では、最初に書類一式を登記所に提出すれば、その後は登記所が発行する1通の証明書を提出するだけで済むようになる。

相続人や金融機関などの負担軽減を図ることが狙いのひとつのようだが、これまでの相続手続きはどのようなものだったのだろうか。相続の問題に詳しい加藤尚憲弁護士に聞いた。


●どうして戸籍謄本が必要なのか?


生前に遺言書を作成していない方が亡くなった場合、相続人の方は、相続の手続に入る前に、まず遺産分割を行うことになります。遺産分割は、相続人の全員の合意により成立します。

その上で、手続きとして、法務局で不動産の相続登記の申請を行ったり、金融機関で預貯金の解約手続きを行ったりしますが、その際、遺産分割協議書とともに、戸籍謄本を提出する必要があります。

なぜなら、戸籍謄本に基づいて相続人の範囲を確認しないと、法務局や金融機関では、遺産分割協議書に署名捺印しているのが本当に相続人の全員かどうか、判断できないからです。


●必要な戸籍謄本とは


相続人の範囲を確認するためには、相続人全員の現在の戸籍謄本に加えて、場合に応じて様々な範囲の戸籍謄本が必要となります。

たとえば、子どもがいる方が亡くなった場合、少なくとも、亡くなった方の「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本が必要です。

なぜなら、亡くなった方の子ども全員が相続人となる以上、結婚前も含めて亡くなった方の一生分の戸籍を調べてみないと、子どもが全部で何人いるか確定できないからです。

これに対して、子どもがいない方が亡くなった場合は、さらに広い範囲の戸籍謄本が必要となります。

亡くなった方の「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本に加えて、少なくとも、亡くなった方の両親それぞれの「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本が必要になるのです。

なぜなら、この場合、亡くなった方の兄弟全員が相続人となりますが(両親は先に亡くなっているとします)、兄弟(両親の子ども)が全部で何人いるかを確認するためには、両親それぞれの「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本を確認する必要があるからです。

現在、高齢により亡くなることが多い昭和初期生まれの世代の方の両親は、明治中頃の生まれの方も多く、戸籍もかなり昔までさかのぼることになります。

また、昭和初期頃には、6人兄弟、7人兄弟も珍しくありませんでした。兄弟の数も多い上に、先に亡くなっている兄弟がいる場合は、その子の戸籍謄本等も必要になるため、手続きに必要となる戸籍謄本の数は、全体で20通を超えることもあります。


●戸籍謄本の取り寄せ、なぜ大変?


戸籍謄本は、その時点での本籍地の市町村役場において保管されています。そのため、養子縁組や結婚などで本籍地が変わっている場合、最後の本籍地から出生時の本籍地までさかのぼって複数の役場から取り寄せる必要があり、手間と時間がかかります。

また、昔の戸籍は墨で手書きのため非常に読みにくく、ある戸籍が、本当に亡くなった方の出生当時の戸籍か、それとも後の時代のものかは、専門家であっても判断に時間を要することがあります。ましてや、一般の方にとって大変なことは言うまでもありません。

こうした事情が、遺産分割協議書の作成などと一緒に専門家が代わって行うことが多いことの理由となっています。


●新制度で変わるもの、変わらないもの


法務省では、相続人が提出した戸籍謄本に基づいて、相続人の範囲を示す証明書を発行することを検討しているとのことです。そして、相続の手続きの際には、戸籍謄本の代わりにこの証明書を提出すれば良いことになるようです。

金融機関など、手続きを行う側にとっては、証明書があることによりわざわざ戸籍謄本を確認することが不要になるため、事務手続きの簡素化を図ることができ、新しい制度のメリットを直接受けることができます。

これに対し、相続人の側では、証明書を取得するためには、あくまで自分で戸籍謄本を揃える必要があるので、証明書の制度ができたとしても楽になる訳ではありません。

もっとも、複数の手続きを同時に進めるために同じ戸籍謄本を何通も取り寄せていた場面で、証明書の発行のための1通で済むようになることで、戸籍謄本の発行手数料が節約できるようになったり、金融機関の判断が早くなることにより相続手続きが早く完了することが期待できたりするなど、わずかながら相続人の側のメリットも期待できそうです。


●戸籍謄本で知るご先祖様の人生


ところで、明治初期から中期頃までの戸籍謄本を調査していると、「慶應」や「安政」といった、幕末を舞台とした歴史ドラマで見るような年号に生まれた方が頻繁に登場します。

戸籍謄本の制度ができたのは明治ですが、その頃生きていた人の大半は江戸時代生まれなのですから、それも当然なのです。

相続に関するご依頼を頂き、相続人の調査の際に取り寄せた戸籍謄本の内容をお客様にお知らせすると、ご先祖様に興味を持たれ、手続きが終わった後の戸籍謄本が欲しいとおっしゃる方が沢山いらっしゃいます。

戸籍謄本を揃えることは確かに大変ですが、相続を機に会ったことのないご先祖様の人生に思いを馳せるのもよいのではないでしょうか。

2016年6月20日月曜日

セミナーを終えて

6月19日、当ブログにても告知させて頂きました「第7回 もしも講座」が、三鷹.市民斎場において開催されました。



当日は、40名近い方にご参加頂きました。

私は、「遺言書の書き方講座」の講師として、1時間にわたり、なぜ遺言書が必要なのかということや、遺言書の内容について具体的にお話をさせて頂きました。

終了後のアンケートでは、セミナーの内容について、「素人にもわかりやすかった」、「具体的に何をすれば良かったのか分かった」など、好意的なコメントを多数頂戴しました。

また、セミナーの修了後には、多数の方から相談予約のお申し込みを頂きました。

ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。

セミナーの内容が皆様のお役に立つことを願っております。

2016年6月7日火曜日

(メディア掲載版)「花押」記された遺言書、最高裁「無効」と初判断…なぜ高裁判決が覆ったのか?

先日のブログ記事を元に、弁護士ドットコムニュースさんに記事を書かせて頂きました。



(記事URL: https://www.bengo4.com/c_4/n_4738/

以下は記事内容です。

--------

印鑑を押す代わりに「花押(かおう)」を記した遺言書の有効性が争われていた事件で、最高裁第二小法廷は6月3日、遺言書を「無効」とする初判断を示した。

判決文によると、最高裁は「遺言書に押印を必要とする理由は、印を押すことにより重要な文書の作成を完結するという慣行や意識が社会の中にあることがその1つである」が、「文書の作成を花押によって完結するという慣行や意識があるとは認めがたい」として、遺言書は無効であると判断し、福岡高裁に審理のやり直しを命じた。

そもそも「花押」とは何か。また、なぜ最高裁は遺言書を無効としたのか。加藤尚憲弁護士に聞いた。

●歴史上はよく使われていた「花押」


「時代劇などで戦国武将の手紙が出てくる時に、最後にサインのようなものが描いてあることがありますね。あれが『花押』です。

『花押』は、江戸時代には廃れてしまったようで、現代ではほとんど用いられていません。一般に知られている例としてはわずかに閣僚が閣議書に署名する際に用いられている位ですので、沖縄で実際に遺言書に用いられたと聞いて、私も大変驚きました」

それでは、花押が書かれた遺言書について、これまで裁判所はどのように判断してきたのだろうか。

「この裁判の下級審である那覇地方裁判所と福岡高等裁判所那覇支部は、いずれも遺言を『有効』と判断していますが、花押を記した遺言の有効性に関する裁判例はおそらく他には存在しないものと思います。今回の最高裁の判断は、これらの下級審の判断を覆すものになりました」

●最高裁での逆転判決。その理由は?


なぜ、最高裁は下級審の判断を覆したのか。

「今回の判決は、平成元年2月16日最高裁判決(第一小法廷)を引用しています。この判決は、印鑑の代わりに指印を押した遺言書の効力が争われた事案でした。

平成元年判決は、『遺言書に押印を必要とする理由は、印を押すことにより重要な文書の作成を完結するという慣行や意識が社会の中にあることがその1つである』という趣旨の指摘をした上で、指印を印鑑の代わりに用いる慣行が社会一般に存在することを根拠に、遺言書を『有効』と判断しました」

●「指印」の場合とは逆の結論を出した最高裁


「これに対し、今回の判決は、花押を印鑑の代わりに使用して文書を完成させるという慣行や意識が社会の中にあるとは言いがたいことから、遺言を『無効』と判断しました。

つまり、指印と花押とでは、社会の中で用いられる頻度が全く異なることから、今回の判決は、平成元年判決と同じ判断基準で、逆の結論を導いたのです」

●「実務への影響はほとんどない」


今回の判決は、今後どのような影響を与えるだろうか。

「そもそも、花押を遺言書に記載するということ自体、現代ではほとんど用いられていないことから、今後同様のケースが起きる可能性は極めて低いでしょう。実務への影響はほとんどないと思われます」

●遺言書は公正証書でトラブルを防ぐ


「なお、自筆で作成した遺言書は、今回のケースのように形式の不備により無効になるケースが後を絶ちません。また、自筆の遺言書は、本物であるかどうかなど無用な争いを誘発することがあります。遺言書を作成するときは専門家に相談の上、必ず公正証書にすることをお勧めします」
加藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

2016年6月3日金曜日

(続々)「花押」による遺言書は有効か(判決速報)

当ブログで2度にわたって取り上げてきた「花押」による遺言書の有効性に関する最高裁判決(最高裁平成28年6月3日第二小法廷判決)がついに出ました。

大方の予想通り、最高裁はこれまでの下級審判決を覆し、「花押」による遺言書を無効とする判断を下しました。

以下は判決文の引用です

------------引用ここから


花押を書くことは、印章による押印とは異なるから、民法968条1項の押印の 要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。

そして、民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及 び氏名の自書のほかに、押印をも要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあい まって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者 が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が 国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるとこ ろ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民 集43巻2号45頁参照)、我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難 い。

以上によれば、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。 

-------------引用ここまで
(出典:最高裁ウェブサイト

判決文は、押印するという行為について、「文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識がある」とする一方、「我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難 い」として、花押による遺言書の効力を否定しています。

ところで、これまでの裁判例としては、最高裁が拇印による遺言書を有効と判断した例があります(最高裁平成元年2月16日判決)。

---------引用ここから

自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、右押印について指印をもって足りると解したとしても、遺言者が遺言の全文、日附、氏名を自書する自筆証書遺言において遺言者の真意の確保に欠けるとはいえないし、いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らすと、文書の完成を担保する機能においても欠けるところがないばかりでなく、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがあるものというべきだからである。
(下線は筆者)
------引用ここまで

このように、平成元年判決も「我が国の慣行ないし法意識」を基準に判断しており、今回の判決は、平成元年の判断基準を踏襲しながら、拇印とは逆の結論を導いたことになります。

簡単に言うと、拇印は一般的に印鑑の代わりとして用いられているのに対し、花押は一般的に使用されているとは言い難い、という点が拇印と花押とで結論を分けることになったものと思われます。

当ブログでは、これまで2回にわたり、下級審判決に疑問を投げかけてまいりました。

その理由は、花押は手で書くものであるため、印鑑とは本質的に異なるものであるというものでした。

ロジックはやや異なりますが、最高裁判決の結論に賛成したいと思います。

【関連するブログ記事】
「花押」による遺言は有効か
(続)「花押」による遺言は有効か


2016年5月25日水曜日

相続セミナーの講師を務めます(6月開催 その2)

一昨年、昨年に続き、国境なき医師団日本様のご依頼により、6月3日に遺産相続セミナーの講師を務めさせて頂きます。



こちらは基本的に団体の支援者様向けのプログラムとなりますので、主催者様への直接のお問い合わせはご遠慮下さい。

6月は既に本ブログで告知させて頂いたとおり、19日にも別のセミナーでお話をさせて頂く予定です。こちらはどなたでもご参加頂けます。

2016年5月23日月曜日

遺言書の出張作成

本日は、神奈川県横須賀市まで出張に行って参りました。

これまで不思議と横須賀には仕事でもプライベートでも縁がなかったため、私にとってこれが初めての横須賀体験となりました。

駅のホームに降り立つと、海沿いの街らしい開放感とノスタルジックな雰囲気の京急電鉄がとてもマッチしています。




遺言書の作成後、短い時間ではありましたが、お客様と一緒に横須賀港を一望することもできました。

遺言書作成のための出張は、私にとってはさほど珍しいものではありません。今年の春には栃木にお住まいの方の遺言書を作成しています。

ご自宅だけでなく、有料老人ホームなどの老人用施設に伺うこともあります。

遺言書の出張作成の際は、もちろん公証人も一緒にお越し頂きます。
健康の優れない方や、施設に入っている方のために、公証人に出張して頂くことができるのです。

ただし、公証人には都道府県ごとの管轄があり、残念ながら東京の公証人に横須賀まで出張をお願いすることはできません。

このような場合は、現地の公証人に公正証書の作成をお願いします。

いつもお世話になっている杉並区の公証人に現地の公証人をご紹介いただくこともあります。

普段と少し勝手が違うこともありますが、少し遠くまで足を伸ばし、これまで知らなかった街の雰囲気を感じることは、嫌いではありません。

足掛け5時間のミニ出張でしたが、心が安らぐ時間も持てた1日でした。

2016年5月15日日曜日

プリンスさんの相続について?

先日、弁護士ドットコムニュースさんからのご依頼により、
「プリンスさん遺産に親族?700人が名乗り…もし日本だった場合の相続ルール」
というタイトルで兄弟間の相続に関する解説を寄稿させて頂きました。

5月14日付けでヤフーニュースと弁護士ドットコムニュースの双方に掲載されておりますので、記事をご紹介させて頂きます。
(ヤフーニュースの方は、一時トップニュースに掲載して頂いたようですが、残念ながら私自身が見つける前に他の記事に替わってしまいました。)



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160515-00004647-bengocom-soci

ヤフーニュースの記事は、一定期間が経過するとリンクが切れると思いますので、弁護士ドットコムニュースの記事もご紹介します。

https://www.bengo4.com/c_4/c_1052/c_1580/c_1592/n_4647/

以下は記事本文です。

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今年4月に急逝したアメリカの伝説的歌手、プリンスさん。その遺産は、3億ドル(約328億円)とも10億ドル(約1100億円)ともいわれている。莫大な遺産をめぐって、なんと700人が「相続する権利がある」と名乗り出ているのだという。

報道によると、プリンスさんは結婚歴があるが、晩年は独身で子どももいなかった。両親はすでに他界しており、遺書も残していなかった。プリンスさんの遺産は、実の妹であるタイカ・ネルソンさんが相続する可能性が高いとされていたが、ほかにも5人の異父母兄弟がいることがわかっているという。

さらに、プリンスさんの血縁関係を調査する団体のもとに、「家族の写真にプリンスさんが写っている」とか「同じ地区に暮らしていた」といった理由などで、親族関係にあたると主張する電話が多数寄せられている。そのなかには、「プリンスさんの子どもだ」と名乗る人物も含まれているそうだ。

プリンスさんの莫大な遺産をめぐっては、今後、一波乱も二波乱もありそうな様相を呈してきている。もちろん、遺産の分配はアメリカの法律で決まるが、もし日本の法律だったらどうなるのだろうか。たとえば、異父母兄弟にも相続する権利はあるのだろうか。加藤尚憲弁護士に聞いた。

●「血族相続人」には順位がある

「日本の民法では、相続人となる資格がある人は、(1)『配偶者相続人』、(2)『血族相続人』(血のつながりがある人)の2つのカテゴリーに分かれます。

このうち(1)配偶者相続人は、常に相続人になります。一方、(2)血族相続人には順位があります。

加藤弁護士はこのように述べる。血族相続人にはどのような順位があるのだろうか。

「第1順位は、子や孫、ひ孫などの『直系卑属』と呼ばれる人たちです。まず、被相続人の子は、無条件に相続人になる資格があります。

これに対して、孫は、本来相続人になるはずの子(Aさん)が、被相続人より先に亡くなった場合だけ、Aさんの子が、Aさんに代わって相続人になります。ひ孫についても同様です。

第2順位は、父母や祖父母などの『直系尊属』と呼ばれる人たちです。相続が発生したときに、通常は、父母や祖父母など、上の世代の人たちがすでに亡くなっていることが多いので、実際は直系尊属が相続人になることは非常に稀です。

第3順位は、兄弟姉妹です。父や母の一方が異なる兄弟姉妹(=半血兄弟)も、兄弟姉妹であることに変わりはないので、相続人となる資格があります。

なお、兄弟姉妹が、被相続人よりも先に亡くなっている場合、その子(被相続人から見ておい・めい)が、相続人になるはずだった兄弟姉妹に代わって相続人になります。

このように、血族相続人には順位があるため、第2順位や第3順位の人が相続人になる資格を得るのは、上の順位の人が誰もいない場合に限られます。

たとえば、兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子や孫が1人もおらず、父や母が先に亡くなっているときに限られます」

●半血兄弟の相続分は「半分」になる

それでは、異父母兄弟であっても、ほかの兄弟と全く同じような取扱いを受けるのだろうか。

「相続できる財産の割合が異なります。兄弟姉妹が複数いる場合、半血兄弟の相続分は、父と母の双方を同じくする兄弟姉妹(=全血兄弟)の半分になります」

亡くなったプリンスさんのケースはどうなるのだろうか。

「海外のニュースサイトによると、プリンスさんが最後に住んでいたミネソタ州の法律では、全血兄弟と半血兄弟は平等に扱われることになっているようです。つまり、日本とはルールが異なるみたいですね。

また、兄弟の孫も相続人になる資格があるということなので、この点も日本とは異なります。海外の話ですが、興味が尽きません」

加藤弁護士はこのように述べていた。

2016年5月10日火曜日

相続セミナーの講師を務めます(6月開催)

本年6月に開催される相続セミナーの講師を務めさせて頂くことになりました。

開催日時:6月19日(日)10:30~14:00(予定)
場所:三鷹.市民斎場
主催者:株式会社AZUMA(東葬祭)様、株式會社栃木屋石材店様(共催)
催事名:第7回 もしも講座
講演内容:「遺言書の書き方講座」(加藤担当)(11:50~)

「もしも講座」ではこれまでにも他の講師の方から遺言に関する話を聞く機会があったとのことですので、今回は普段の私のセミナーよりも具体的な遺言の内容に踏み込んだ話をさせて頂く予定です。

このセミナーは、どなた様でも聴講頂くことが可能です。
参加ご希望の方は、お気軽に主催者様までお申し込み下さい(0120-66-5940)。



2016年4月17日日曜日

遺産分割の対象と預貯金(2)

先日のブログ記事について、続きを含めて弁護士ドットコムニュースに記事として掲載されましたので、ご紹介します。

記事の後に少しだけ補足がありますので、併せてご覧頂ければと思います。

タイトル:「骨肉の争い」が長期化?「預金は遺産分割の対象外」の判例変更があった場合の影響
<リンク先:https://www.bengo4.com/c_4/c_1050/n_4543/



記事本文

銀行預金が「遺産分割」の対象になるかどうか争われた審判の許可抗告審で、最高裁第1小法廷(山浦善樹)は3月下旬、最高裁の裁判官15人全員でおこなう大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に審理を回付した。

報道によると、大法廷に回付されたのは、ある遺族が別の遺族に対して、約3800万円の預金などの遺産分割を求めた審判だ。1審大阪家裁と2審大阪高裁はいずれも「預金は遺産分割の対象外」と判断したという。

預貯金の遺産分割をめぐっては、最高裁が以前、「預貯金は対象とならない」と判断していた。大法廷回付は判例変更などをおこなう場合にされるため、今回、最高裁がこの判例を見直す可能性が高まっている。もし、判例が変更されると、どのような影響があるのだろうか。加藤尚憲弁護士に聞いた。

●預金の相続をめぐるルールはどうなっているのか?


「今回の話をわかりやすくするために、前提から説明します。

まず、遺産分割は、(1)遺言による指定にしたがう、(2)遺言による指定がない場合、相続人全員で協議して決める、(3)協議で決まらなければ、家庭裁判所での調停・審判を通じて決める、という流れになっています。

そして一般に、預金は、遺産分割の対象となることが当然のように思われるかもしれません。しかし、実はそうではないのです」

加藤弁護士はこのように述べる。

「判例によると、預金は原則として、『法定相続分にしたがい当然に分割して承継される』とされています。

つまり、遺産分割が成立していなくても、相続人は、銀行など金融機関に対して、法定相続分にしたがった預貯金の支払いを求めることができる権利があるのです」

たとえば、預金額が200万円で、相続人が子ども2人という事例で考えると、どうなるのだろうか。

「法定相続分にしたがい、子ども2人はそれぞれ、預金の2分の1ずつを相続します。したがって、遺産分割をしていなくても、金融機関に対して、それぞれ100万円ずつ支払うように求めることができます。

もっとも、判例は、預金について遺産分割することを禁止しているわけではありません。相続人全員が合意していれば、預金を遺産分割の対象にすることもできます。

むしろ、世間一般には、預金を含めた相続財産全体を遺産分割の対象にするケースが圧倒的に多いと思います」

●実際の金融機関の対応に隔たりがある


判例のルールにしたがって、遺産分割をせずに金融機関に預金の払い戻しを求めた場合、何か問題はあるのだろうか。

「(a)相続人が、金融機関に法定相続分にしたがった預金の支払いを求めることができる権利があることと、(b)実際に金融機関が預金の払い戻しに応じること、は別の話です。

たとえば、遺言書がないケースでは、金融機関は通常、遺産分割がおこなわれるか、相続人全員が同意しない限り、預金の払い出しに応じません。実はそれには理由があるのです。

先ほど述べたとおり、実際には、預金も含めた相続財産全体について遺産分割がおこなわれることが数多くあります。遺産分割により預貯金を相続した人が金融機関に預金の払い出しを求めたときに、すでに金融機関が法定相続分にしたがって払い出していると、金融機関と相続人との間にトラブルが発生する可能性が高いのです。

このように、判例のルールと金融機関の対応には大きな隔たりがあります。

もっとも、相続人は、預金の引出しに応じない金融機関を訴えて、裁判所の判決を得れば、金融機関も預金の引出しに応じます。最終的には、判例のルール通りになります。しかし、そのために、わざわざ訴訟という手段を用いる必要があるのです」

●判例の見直しの影響について


もし今回、判例が見直され、不動産などと同じように預金が遺産分割の対象になると、相続の当事者にとってどのような影響があるのだろうか。

「金融機関に対して、遺産分割前に預金の引き出しを求めることができなくなる可能性があります。また、相続人の間で、意外な損得の変化が起きる可能性があります。

たとえば、以前に、次のようなことがありました。

複数の相続人のうちの1人が特別な貢献をしたことによって、被相続人の財産が増えたり維持されたりした場合、その相続人は、遺産分割の際に、法定相続分よりも多く相続する権利があります。これを『寄与分』といいます。

預金と僻地の不動産のみを相続財産とする遺産分割で、被相続人と同居していた相続人が当初、被相続人を長年介護していたとして寄与分の存在を主張しました。しかし、ほかの相続人は寄与分を認めず、法定相続分による相続を主張したため、話がまとまりませんでした。

ところが、遺産分割の調停に入ったとたん、被相続人と同居していた相続人は、調停委員の説得に応じて寄与分の主張を取り下げて、法定相続分通りの遺産分割が成立しました。

私は、調停委員による説得を目の当たりにしたわけではないのですが、おそらく調停委員は次のような内容の話をしたものと推測します。

『そもそも預金を遺産分割の対象とするためには、相続人全員の同意が必要だ。

いくら寄与分を主張したところで、ほかの相続人が預金を遺産分割の対象とすることに同意しなければ、寄与分を主張する相続人は、誰も欲しくない僻地の不動産を多めに相続する結果となる。

そうであれば、寄与分を主張しない方が得策である』」

現在の判例を前提にすれば、こうした説得は効果的だろう。

「しかし、もし判例が変更され、預金が遺産分割の対象となった場合、このケースで被相続人と同居していた相続人は、預金をより多く相続するために、寄与分を主張する実益があることになります。

そうすると、実際に遺産分割の結果も変わってくるかもしれません。つまり、寄与分を主張したい当事者にとっては、判例変更によって、預金が遺産分割の対象になったほうが得になります。

また、同じようなことは、寄与分だけでなく、特別受益(たとえば、マンション購入の際に被相続人から頭金を出してもらった場合など)でも起こりえます。

寄与分や特別受益は、相続で最ももめやすいテーマの1つです。判例変更後は、寄与分や特別受益を主張する実益がある場面が増えるため、遺産分割をめぐる争いが長期化するケースが増えるという影響があると予想します」

加藤弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)

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[補足]

なお、預金を遺産分割の対象とするか否かについては、現在、法制審議会で審議の対象となっております。

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900285.html

文字数の関係から、記事では省略されてしまいましたが、今回の判例変更(の可能性)についても、法制審議会での議論の影響があるのではないかと言われています。

このテーマの議論がなされた日の法制審議会の議事録は、本日(4月17日)現在まだ公開されておりませんが、今後の審議の方向性についても注目して参りたいと思います。

2016年3月23日水曜日

遺産分割の対象と預貯金

皆さん、「預貯金は遺産分割の対象ですか?」と聞かれたら、何と答えますか?

「当然でしょ」と答えるかもしれませんね。

ところが、びっくりされる方も多いと思いますが、現金と違い、預貯金は原則として遺産分割の対象ではないのです。

預貯金は、金融機関に対して、「預けたお金を返してください」と求めることができる権利です。法律上、このような権利を「債権」と呼びます。

これまで、最高裁判例では、相続の際、金銭債権は、法定相続分に従い当然に分割されることとされていました(最高裁平成16年4月20日判決)。

つまり、遺産分割が成立していなくても、相続人は、金融機関に対して相続分に従った預貯金の支払いを求めることができるのです。

このように、「預貯金は、相続によって当然に分割されるものである以上、遺産分割の対象ではない」ということが論理的な帰結になります。

もっとも、現実には預貯金を遺産分割の対象にしていることが一般的なのですが、これは当然のことではなく、あくまで預貯金を遺産分割の対象にすることについて、相続人全員が合意して行っているからにすぎません

逆に言うと、家庭裁判所で遺産分割調停を行う際に、預貯金を遺産分割の対象とすることについて、相続人の間で合意が成立しない場合は、裁判所は預貯金について調停の対象とはしていません。このような実務上の取り扱いも、上記の最高裁判例が存在しているからなのです。

ところが、本日の報道によりますと、この判例が覆される可能性が出てきました。

---引用ここから


「預金は対象外」判例変更へ=遺産分割審判で大法廷回付-最高裁

遺産分割をめぐる審判の許可抗告審で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は23日、審理を15人の裁判官全員で行う大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付した。預金は遺産分割の対象外とする根拠となっている最高裁判例は、実務との隔たりが指摘されており、見直すとみられる。
 大法廷に回付されたのは、遺族の1人が別の遺族に対し、約3800万円の預金などの遺産分割を求めた審判。一審大阪家裁と二審大阪高裁は、遺族間の合意がない場合、預金は分割できないと判断した。(2016/03/23-17:27)

---引用ここまで (引用元:時事通信社 時事ドットコム

上記の通り、この最高裁判例は、実務上の取り扱いの根幹を成している極めて重要なものです。

判例変更が実現した場合、実務への影響はかなり大きなものになることが予想されます。また、ケースによっては、従来の判例に従った場合と比較して、相続人に損得の違いが発生することが考えられます。

本ブログでは、どのような変化があり得るかについて、このエントリーの続編としてケース別に分析することを予定しております。お楽しみに。

(追記)

本件についても、本日(3月24日)弁護士ドットコムニュース編集部様から原稿のご依頼を頂きましたので、メディアにて掲載予定となりました。掲載予定日との兼ね合いで、本ブログでの発表とどちらが先になるかは未定です。